日本初演(ドイツ語上演・字幕付き)
台本・作曲 : フランツ・シュレーカー
Franz Schreker
Chistophorus oder »Die Vision einer Oper«
japanische Erstaufführung
リヒャルト・シュトラウスと
双璧を成したオペラ作家
フランツ・シュレーカーのオペラ、
日本初の舞台上演!
シュレーカーは、R.シュトラウスが《薔薇の騎士》《ナクソス島のアリアドネ》《影の無い女》を書いた同時期に、彼の三大オペラと呼ばれる《遥かなる響き》《烙印を押された者たち》《宝掘り人》を完成させ、当時のオペラ作曲家で唯一、シュトラウスに並ぶ公演回数を誇る人気作家に上り詰めました。
その功績によって彼はベルリン音楽大学の学長に就任し、作曲教授として多くの逸材を育てた一方、次第に強まるナチスの圧力と、急激な作曲様式の変化という時代の荒波に翻弄されて、自身の新作オペラは前作ほどの評価に届かなくなりました。
《クリストフォロス、あるいは「あるオペラの幻影」》は、このような境遇にシュレーカーが放った抵抗の一矢です。
作曲家である主人公には、彼自身の音楽観を語らせます。そしてバロックから後期ロマン派に至る伝統的な音楽、およびウィーンのモダニズムを色濃く反映した「三大オペラ」の作風と、当時最先端の前衛的な音楽様式からキャバレー音楽までを縦横無尽に融合させ、さらにフロイトの精神分析と、ヴァイニンガーのジェンダー論まで盛り込んだ、意欲あふれる実験作です。
しかし極めて官能的で美しい音楽と、コミカルな芝居によって、作品の全容は上質の娯楽に仕上がっています。
1933年に予定された初演は、ナチスが同年1月に政権に就いたことによりキャンセルされました。シュレーカーは学長等の公職も追われ、秋には脳梗塞に倒れて翌年3月、56歳の誕生日目前に亡くなります。
この曲は唯一、彼自身が観る事のできなかった、自作オペラとなりました。
ナチスから「退廃芸術」の烙印をおされた多くの作品のうち、シュレーカーのオペラは戦後の復活が最も遅れ、ようやく1970年代から取り上げられるようになりました。その一環としてこの曲も、作曲後約半世紀を経た1978年にフライブルクで、「初演」されました。しかしその後は2001年キール劇場の上演記録しかありません。
当公演はシュレーカーの全オペラ作品をつうじて、日本初の舞台上演になります(国内で唯一の全曲公演は2000年東京フィル・大野和士の《遥かなる響き》演奏会形式です)。
会場
清瀬けやきホール
日程
2024年 6月 22日(土)・23日(日)
両日とも14時開演
上演予定時間
約 2時間 30分(休憩含む)
公演監督
Produktionsleitung
田辺とおる
Mag. Toru Tanabe
国際声楽コンクール東京 /
プリマヴェーラ声楽コンコルソ代表,
(一社)カンタームス代表理事
指揮
Musikalische Leitung
佐久間龍也
em.Prof.Tatsuya Sakuma
沖縄県立芸術大学名誉教授
演出
Inszenierung
舘 亜里沙
Dr. Arisa Tachi
音楽学博士、東京藝術大学講師
役名
6月22日
6月23日
アンゼルム
Anselm
羽山晃生
Kosei Hayama
芹澤佳通*
Yoshimichi Serizawa*
リーザ
Lisa
津山 恵
Megumi Tsuyama
宮部小牧
Komaki Miyabe
クリストフ
Christoph
石崎秀和
Hidekazu Ishizaki
高橋宏典*
Hironori Takahashi*
ロジータ
Rosita
武井涼子*
Ryoko Takei*
塙 梨華*
Rika Hanawa*
ヨハン先生 / シュタルクマン
Meister Johann / Starkmann
田辺とおる
Toru Tanabe
田辺とおる
Toru Tanabe
霊媒フロランス
Florence, ein Medium
原 夏海*
Natsumi Hara*
大澤 桃佳*
Momoka Osawa*
ハインリッヒ / フレデリック
Heinrich / Frederik
上田 駆*
Kakeru Ueda*
調整中
N.N.
アマンドゥス / エルンスト
Amandus / Ernst
西條秀都*
Shuto Saijo*
調整中
N.N.
子供
Das Kind
都筑夕姫菜*
Yukina Tsuzuki*
長嶋穂乃香*
Honoka Nagashima*
ハルトゥング博士 / 司会者
Dr.Hartung / Der Conférencier
ヨズア・バルチュ
Josua Bartsch
ダニエル・ケルン
Daniel Kern
カルダーニ神父
Abbé Caldani
ダニエル・ケルン
Daniel Kern
ヨズア・バルチュ
Josua Bartsch
リーザの侍女エッタ
Etta, Lisas Zofe
中尾梓
Azusa Nakao
中尾梓
Azusa Nakao
ホテルのピアニスト
Der Pianist des Hotels
久保彩花
Ayaka Kubo
久保彩花
Ayaka Kubo
マーベル / シリア /
ホテルの客
Mabel / Silia / Hotelgäste
調整中
N.N.
調整中
N.N.
*: 国際声楽コンクール東京,
プリマヴェーラ声楽コンコルソ,
東京国際声楽コンクール入選・入賞者
*: Preisträger und (Semi-)Finalisten des Internationalen Vocalcompetitions Tokyo bzw. Concorso di Canto "Primavera"
弦楽合奏
Streicherensemble
コンサートミストレス
Konzertmeisterin
三戸素子
Motoko Mito
エレクトーン
Electone(E-Orgel von Yamaha)
山木亜美
Ami Yamaki
柿﨑俊也
Toshiya Kakizaki
1.Vn:三戸素子, 福嶋慶大, 塗矢真弥 ; 2.Vn:水村浩司, 城達哉, 渡邊田鶴野 ; Va:長谷川弥生, 河野理恵子 ; Vc:小澤洋介, 宮澤等 ; Kb:西澤誠治
1.Vn: Motoko Mito, Keita Fukushima, Maya Nuriya ; 2.Vn: Koji Mizumura, Tatsuya Shiro, Tazuno Watanabe ; Va: Yayoi Hasegawa, Rieko Kono ; Vc: Yosuke Ozawa, Hitoshi Miyazawa ; Kb: Seiji Nishizawa
全席 自由 8,000円
2024年1月10日 発売予定
作品の梗概
大男レプロブスは、強きものに仕えることを望み皇帝のもとに居たが、皇帝が悪魔を恐れたことから、悪魔に従って悪行を重ねた。しかし隠者から奉仕することを諭されて、川を渡る人々を助けていた折、一人の少年を背負ったところ、川の中で際限なく重みが増してゆく。少年は自らがイエス・キリストであり、全世界の罪を背負っているため重いのだと明かし、レプロブスを祝福して、今後はキリストを背負ったものという意味の、クリストフォロスと名乗るよう命じた。
表題のとおり、このオペラはキリスト教の聖人伝説を念頭に置いている。しかし伝説自体は、オペラの筋書には組み込まれていない。聖人クリストフォロスを「同名の祖先」と呼び、強きものを希求する登場人物、クリストフの人物像にシュレーカーは伝説を象徴させた。その対極をなす弱きものには、作曲学生のライバルであるアンゼルムをあて、強きものは凡庸、弱きものは才能豊かな人物と設定した。
プロローグでは,作曲教師ヨハンの音楽室に数人の作曲学生が登場する。なかでもクリストフは因習的な作曲技法に甘んじる凡庸な才能と設定されており,シュレーカーの思想を代弁する気鋭の新進作曲家アンゼルムとは対照的な存在である。
伝統的価値観を持つ教師ヨハンは学生たちに,聖クリストフォロス伝説を題材に用いた弦楽四重奏曲を書くという課題をだす。しかしアンゼルムは,伝統的で純粋な音楽形式としての弦楽四重奏を拒み,同じ題材によってオペラを書くことを企てる。
師ヨハンの娘でファムファタル的な性質をもつリーザは,作曲を断念して妻子への愛情に生きると宣言したクリストフと結婚するが,アンゼルムとの恋心も鎮めることができず,1幕2場でクリストフに射殺される。クリストフの逃走をアンゼルムが幇助して身を沈めたキャバレーの場面,第2幕では霊媒の口寄せでリーザの声を聴くうちにクリストフは覚醒し,象徴的な死という救済に邁進する。
長い間奏曲を経たエピローグでは「男の力を知りつつ,女の弱さに留まる者」たるべしと諭す老子の『道徳教』の一節が響く。結局アンゼルムはオペラを完成させることができず,やはり弦楽四重奏を作ると決断して作品は幕を閉じる。